いま私たちの身の回りで起きていること
防災の日の由来
9月1日は「防災の日」です。また8月30日から9月5日の1週間は防災週間として、国や多くの自治体、学校で、防災訓練や防災イベントが行われています。防災の日は1960年に制定された記念日で、1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災に由来しています。
関東大震災は、近代化した首都圏を襲った唯一の巨大地震とされており、全半壊、焼失、流失、埋没などの被害を受けた住宅は計37万棟。10万5,000人以上の死者・行方不明者が発生しました。
甚大な被害をもたらした関東大震災にちなみ、国民の一人ひとりが自然災害について対処する心がまえを準備し、被害を未然に防止あるいは最小限度に食い止めるなど、災害に対する認識を深めることを目的として「防災の日」が制定されました。
時代の変化と共に行動パターンもアップデート
関東大震災の被害拡大の要因として挙げられているのが発生時刻です。地震発生時刻が調理で火を使う昼食の時間帯と重なったことに加え、強風によって火災旋風が巻き起こり火災が拡大、地震による犠牲者の9割が火災による死者でした。
この教訓から「グラッときたら火の始末」が長い間、防災訓練時の合言葉となっていましたが、現在は自動消火機能のある調理器具が普及してきたため、無理に火を消す行為よりも「グラッときたら火元から離れる」といった身の安全確保が優先という風潮に少しずつ変化をしています。
自然災害が多い日本の近年の傾向
変化は、災害時の行動パターンだけに留まりません。日本は他の国に比べ自然災害が多い国として有名ですが、特にここ数年は「異例の大雨」などが相次いでおり、年々被害が激甚化・頻発化しています。背景には、地球温暖化の影響があると考えられており、日本を襲う台風も今後ますます勢力が強くなる可能性があり、さらなる被害の拡大化が懸念されています。
上記は、過去30年に日本に接近および上陸した台風の数です。上陸した台風の数をみると、30年前の年間の平均回数は約3回だったのに対し、この10年では約3.5回と増加傾向にあり、各地で甚大な被害が出ています。
激甚化する自然災害と折込紙面の変化
折込紙面も地震対策中心から変化の兆し
自然環境が刻々と変化していく過程で、同様に変化の兆しが見えるのが折込紙面です。全国の防災に関する折込広告の出稿状況をみると、ホームセンターや総合通信販売、スーパー、保険などの業種を中心に、毎年8月後半から防災の日の当日に数多く出稿されています。これは、人々の意識が高まる9月1日の「防災の日」を見据えてのことです。加えて2011年の東日本大震災以降は、東北や首都圏を中心に3月にも防災に関連した出稿が多い傾向にあります。
業種により折込紙面に掲載されている内容はさまざまですが、ホームセンターやディスカウントストアの紙面内容をみると、5年ほど前までは「地震」に対する防災グッズの訴求が大部分を占めていました。しかし、ここ1~2年は「台風」「豪雨」「停電」に対応した防災グッズの訴求が徐々に増加しています。
自然災害によるインフラ復旧にかかる時間
特にここ数年来の「防災の日」前後で配布された折込紙面でスペースの拡大傾向にあるのが、電力確保に関するものです。下記は、自然災害のよる電力復旧に要した時間の一覧となっています。いずれの災害時でも停電後、復旧までに平均して数日の期間を要していることがわかります。
今から10年前の防災に関する折込紙面は、非常時の電源確保に乾電池を訴求している広告がほとんどでしたが、最近では乾電池に加えて家庭用のポータブル電源やインバーター式発電機などを数多く目にするようになりました。
防災グッズにNew Wave
劇的な進化を遂げ続けている防災グッズ
防災グッズというと、いざという時に目立つよう蛍光色や銀色で彩られた商品が主流でしたが、最近では普段の生活やインテリアになじむデザイン性の高い商品が続々と開発されています。
例えば2021年度のグッドデザイン賞「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれた多機能寝袋は、普段はクッションとして使用しても違和感のないデザインとして、テレビや雑誌など多くのメディアで紹介されたほか、目立つ赤色でどうしても納戸などにしまいこみがちな消火器についても、白や黒の洗練されたカラーのものが登場しています。
ほかにも普段の生活で活用されることがほぼ無い割に収納時には場所を取るヘルメットは、折り畳み式の商品が開発され、本棚やデスクに収納できるそのコンパクトさがファミリー層を中心に支持を集めています。
防災への備えが特別なものではなく日常の延長として、生活に溶け込むような商品が数多く販売されることで、防災グッズと普段使い商品のボーダレス化が進みつつあります。
防災グッズはビジネスチャンスの宝庫
こうした変化は、小売店にとってビジネスチャンスとなります。今まで既存の防災グッズの販促機会は限られていましたが、このような風潮を上手に利用すると新しい購入層を取り込めます。
ローリングストックは流通小売店の強い味方
食品の備蓄はローリングストックという方向へ
災害時の備えとして、最も重要なものに食品の備蓄が挙げられます。過去の震災を振り返ると、災害発生からライフライン復旧まで1週間以上を要するケースが多く、備蓄は最低3日分~1週間分×人数分が目安といわれています。災害時は精神的にも肉体的にも緊張を強いられるため、食事は大変重要なファクターとなってきますが、防災用の非常食は食べ慣れない食品が多く、食が細くなりがちです。
そこで、いま政府や自治体などで推奨しているのが食品のローリングストックです。ローリングストックとは、普段食べている食品を少し多めに買っておき、食べたら買い足すといった「消費しながら備蓄をしていく考え方」になります。普段食べ慣れている食品が非常食となるため、災害時でも日常と変わらない食生活が送れるメリットがあります。このほか、食べたら買い足しておくので賞味期限の管理が楽にできます。
ローリングストック推進によるスーパーや小売店のメリット
スーパーや小売店にとって防災用の非常食の販促は年に一度が主流となっています。また長期保存が可能の商品ともなれば、次回購入までのスパンが長く、来店頻度を上げるイベントとしては不向きなため、販促活動に躊躇しているスーパーや小売店もあるかもしれません。
しかし、ローリングストックの管理方法を推奨すると、日常的に食べている商品を多めに備蓄し、消費と購入を繰り返すことになります。スーパーや小売店にとっては、非常食よりも販促のチャンスが多くなる、通常取り扱っている商品を非常食として販促に活用できる、というメリットがあります。
すでに今年に入り関西のスーパーでは1月に、首都圏のスーパーでは3月に、ローリングストックを提唱する折込広告が実施されています。今はまだローリングストックに向く缶詰やレトルトカレー、パックのご飯、長期の常温保存が可能な豆腐商品などの紹介がほとんどですが、今後はメーカーとのコラボ企画の立ち上げや、食品ロス削減にからめたレシピ紹介の展開など、今までにない販促イベントとして捉えてみてはいかがでしょうか。
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